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  • 執筆者の写真弁護士古賀象二郎

厚生労働省「令和元年医師の勤務実態調査」の結果公表

更新日:2020年8月25日

【執筆した弁護士】

古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士

1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。

事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP

日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報


★未払残業代請求の基礎知識についてはこちらをご覧ください。


★働き方改革関連法による時間外労働の罰則付き上限規制等についてはこちらをご覧ください。


<本日の内容>

1 働き方改革関連法による時間外労働の罰則付き上限規制の適用猶予

2 「医師の働き方改革に関する検討会報告書」のとりまとめ

3 「令和元年 医師の勤務実態調査」の結果の公表


1 働き方改革関連法による時間外労働の罰則付き上限規制の適用猶予

 2018(平成30)年6月成立の働き方改革関連法による労働基準法改正により,時間外労働(ないし時間外労働に休日労働を加えた時間)の罰則付き上限が初めて導入されましたが(労働基準法36条3~6項),これには適用除外と適用猶予が置かれ,そのうち医業に従事する医師については,2024(令和6)年3月31日(同日及びその翌日を含む期間を定めている36協定に関しては,当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間,有害業務の時間外労働の上限(労働基準法36条6項1号)を除き,時間外労働(ないし時間外労働に休日労働を加えた時間)の罰則付き上限(労働基準法36条3~5項,6項2・3号)は適用されず,猶予されています(労働基準法141条4項)。


2 「医師の働き方改革に関する検討会報告書」のとりまとめ

 その後, 医師の働き方改革に関する検討会(座長:岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)において,医師の時間外労働規制の具体的な在り方,労働時間の短縮策等についてとりまとめが行われました(「医師の働き方改革に関する検討会報告書」2019(平成31)年3月28日)。


 この報告書では,診療従事勤務医の時間外労働の上限水準としては,脳・心臓疾患の労災認定基準(平13・12・12基発1063号「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」としています。)を考慮した特別協定の年間限度につき960時間の特例を設けること(A水準)を設定しています。

 報告書はこのほかに2つの水準を設けるとしていて,地域医療提供体制の確保の観点からやむを得ずA水準を超えざるを得ない場合を想定し,地域医療確保暫定特例水準として特別協定の年間限度につき1860時間の特例(B水準)を設定する,さらに①臨床研修医・専門研修中の医師の研鑽意欲に応えて一定期間集中的に知識・手技を身につけられるようにすること,②高度な技能を有する医師を育成する必要がある分野において新しい診断・治療法の活用・普及等が図られるようにすることが必要であり,集中的技能向上水準として特別協定の年間限度につき,これも1860時間の特例(C-1水準,C-2水準))を設定するとしています。詳細については厚生労働省ホームページの報告書を参照ください。


 【医師の働き方改革に関する検討会 報告書】


3 「令和元年 医師の勤務実態調査」の結果の公表

 他方,2024(令和6)年の時間外労働上限規制適用前においても,医師の時間外労働の状況やその分布等の実態把握は不可欠であるとして,2016(平成28)年に実施した厚生労働科学特別研究事業である「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査研究(研究代表者:井元清哉)」と同等規模の勤務実態調査を行うとの目的で,2019(令和元)年9月2~8日に医師の勤務実態調査「令和元年 医師の勤務実態調査」が行われ,その調査結果がこのほど厚生労働省より公表されました。詳細については厚生労働省ホームページの公表資料を参照ください。


 【厚生労働省公表資料】

 

 この調査では,回収した調査票のうち,週4日以上働いている病院勤務医8937件のデータについて分析しています。週労働時間の区分別割合は,以下のとおりでした。


①週40時間未満   13.7%

②週40~50時間  22.3%

③週50~60時間  26.3%

④週60~70時間  18.9%

⑤週70~80時間  10.4%

⑥週80~90時間   5.0%

⑦週90~100時間  2.3%

⑧週100時間以上   1.2%


 年間労働時間に換算すると,A水準の特別協定の年間限度960時間内の労働時間であった者の割合は62.3%(=①+②+③),B,C-1・C-2水準の特別協定の年間限度1860時間内の労働時間であった者の割合は91.6%(=①+②+③+④+⑤)という調査結果となっています。


更新日 2020年8月3日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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