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  • 執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が未払残業代を解説~管理監督者についての行政解釈1

未払残業代請求の基礎知識についてはこちらをご覧ください。


<本日の内容>

1 一般的な場合における管理監督者の判断基準を示した行政解釈

2 上記1の取扱いについて適正な監督指導等を求めたもの


1 一般的な場合における管理監督者の判断基準を示した行政解釈

 管理監督者の該当性について,実際の裁判例の多くは,行政解釈の内容を何らか参照した上で判断しているとされています。

 そこで管理監督者性に関する行政解釈を確認しておくと,個別の業種・業態についてではなく,一般的な場合における判断基準を具体的に示したものとして, 昭22・9・13発基17号,昭63・3・14基発150号があります(白石哲編『労働関係訴訟の実務(第2版)』(商事法務,2018年)154頁(細川二朗))。その内容は以下のとおりです。

 法41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは,一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては,下記の考え方によられたい。

                   記

⑴ 原則

 法に規定する労働時間,休憩,休日等の労働条件は,最低基準を定めたものであるから,この規制の枠を超えて労働させる場合には,法所定の割増賃金を支払うべきことは,すべての労働者に共通する基本原則であり,企業が人事管理上あるは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。

⑵ 適用除外の趣旨

 これらの職制上の役付者のうち,労働時間,休憩,休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って,その範囲はその限りに,限定しなければならないものであること。

⑶ 実態に基づく判断

 一般に,企業においては,職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と,経験,能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが,管理監督者の範囲を決めるに当たっては,かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目する必要があること。

⑷ 待遇に対する留意

 管理監督者であるかの判定に当たっては,上記のほか,賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合,定期給与である基本給,役付手当等において,その地位にふさわしい待遇がなされているか否か,ボーナス等の一時金の支給率,その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお,一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって,実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。

⑸ スタッフ職の取扱い

 法制定当時には,あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が,本社の企画,調査等の部門に多く配置されており,これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては,管理監督者と同様に取扱い,法の規制外においても,これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ,かつ,法が監督者のほかに,管理者も含めていることに着目して,一定の範囲の者については,同法41条2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。

2 上記1の取扱いについて適正な監督指導等を求めたもの

 厚生労働省労働基準局監督課長の平20・4・1日基監発401001号は,上記1の行政解釈で定めた管理監督者の取扱いについて適正な監督指導等を求めたものとされます(白石・前掲154頁(細川))。その内容は以下のとおりです。

 近年,以上のような点を十分理解しないまま(注:上記1のこと。),企業内におけるいわゆる「管理職」について,十分な権限,相応の待遇等を与えていないにもかかわらず,労働基準法上の管理監督者として取り扱っている例もみられ,中には労働時間等が適切に管理されず,割増賃金の支払や過重労働による健康障害防止等に関し労働基準法等に照らして著しく不適切な事案もみられ,社会的関心も高くなっているところである。

 また,このような状況を背景として,管理監督者の取扱いに関して,労使双方からの相談が増加している。

 このため,労働基準監督機関としては,労働基準法上の管理監督者の趣旨及び解釈例規の内容について正しい理解が得られるよう十分な周知に努めるとともに,管理監督者の取扱いに関する相談が寄せられた場合には,企業内におけるいわゆる「管理職」が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するものではないことを明らかにした上で,上記の趣旨及び解釈例規の内容を十分に説明するほか,管理監督者の取扱いについて問題が認められるおそれのある事案については,適切な監督指導を実施するなど,管理監督者の範囲の適正化について遺憾なきを期されたい。

2020年7月15日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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