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福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説30~「転勤者用社宅」,「慶弔休暇等」,「病気休職」

最終更新: 6月27日

<本日の内容>

1 転勤者用社宅についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

2 慶弔休暇,健康診断に伴う勤務免除有給保障についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

3 病気休職についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断


1 転勤者用社宅についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 本日は,昨日の福利厚生施設の利用に続き,同じく会社の福利厚生に位置づけることができる転勤者用社宅,慶弔休暇,健康診断に伴う勤務免除・有給保障,病気休職について検討します。


 まず,転勤者用社宅については,①転勤に伴う住宅賃貸の負担をなくすというのが転勤者用社宅の性質・目的ですから,②その主な考慮要素は,転勤に伴う住宅賃貸の負担の発生であり,この点において正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者を区別する理由はありません。「転勤に伴う住宅賃貸の負担」の発生は,それぞれの会社の転勤者用社宅の利用基準に従って判断されますが,その利用基準が転勤者用住宅の性質・目的に沿ったものであるとして,③通常の労働者と同一の利用基準を満たすパートタイム・有期雇用労働者には,同一の利用を認めなければなりません(水町・前掲108頁)。同一労働同一賃金ガイドラインにも「通常の労働者と同一の支給要件(例えば、転勤の有無、扶養家族の有無、住宅の賃貸又は収入の額)を満たす短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の転勤者用社宅の利用を認めなければならない。」とあります(第三の四(二))。


2 慶弔休暇,健康診断に伴う勤務免除有給保障についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 次に,慶弔休暇,健康診断に伴う勤務免除・有給保障という福利厚生も,通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで同一の取扱いが求められます。①慶弔休暇には一定の家族や親族にかかわる事情(慶弔)への配慮,健康診断に伴う勤務免除・有給保障には有給の勤務免除で安心して健康診断を受診することによる健康確保という性質・目的がそれぞれあり,②その主な考慮要素は,慶弔休暇では一定の家族や親族にかかわる事情(慶弔)への休暇付与という配慮の必要, 健康診断に伴う勤務免除・有給保障では健康診断受診の必要です。したがって,③②の考慮要素の点で事情が異ならない正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者には同一の付与をすることが求められます(水町・前掲108頁)。同一労働同一賃金ガイドラインにも,「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない。」とあります(第三の四(三))。


 他方,②の考慮要素の点で,正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで事情が異なる場合は,待遇に相違を設けることは問題とされず,ただ事情の違いに応じた均衡のとれた処遇とする必要があると思われます。


 ②の考慮要素の点で,正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで事情が異なるのはどのような場合か。これは,同一労働同一賃金ガイドラインにある慶弔休暇付与についての問題とならない例が参考になります。

 そこには,「A社においては、通常の労働者であるXと同様の出勤日が設定されている短時間労働者であるYに対しては、通常の労働者と同様に慶弔休暇を付与しているが、週二日の勤務の短時間労働者であるZに対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与している。」とあります。

 慶弔休暇では一定の家族や親族にかかわる事情(慶弔)への休暇付与という配慮の必要が主な考慮要素となるのですが,この例では,それを出勤日をもとに判断しており,正規労働者と同一の出勤日が設定されているパートタイム労働者は,「一定の家族や親族にかかわる事情(慶弔)への休暇付与という配慮の必要」という事情において同じであるから同一の付与をし,週2日のパートタイム労働者は,その事情において違いが認められるので,正規労働者とは異なり勤務日の振替での対応を基本としつつ,振替が困難な場合には慶弔休暇を付与することとして待遇の均衡を実現しようとしています。


3 病気休職についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 本日の最後,病気休職については,①病気休職中の解雇を猶予することで安心して休職し健康回復を図ることを促すというのがその性質・目的です。したがって,②その主な考慮要素は,休職事由発生の場合に解雇を猶予されて健康回復を図る必要です。そのため,③②の考慮要素が同じであれば正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで同一の付与を,違いがあれば違いに応じた均衡のとれた付与をしなければなりません。より具体的にいうと,②の「解雇の猶予」といっても前提となる労働契約の期間が,正規労働者と有期雇用労働者とでは異なりますので,無期雇用のパートタイム労働者には正規労働者と同一の付与をしなければならず,有期雇用労働者(有期雇用のフルタイムおよびパートタイム労働者)には労働契約の残存期間を踏まえた付与をしなければならない,となります(水町・前掲108,109頁)。同一労働同一賃金ガイドラインも「短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。」としており(第三の四(四)),問題とならない例にも「A社においては、労働契約の期間が一年である有期雇用労働者であるXについて、病気休職の期間は労働契約の期間が終了する日までとしている。」とあります。


2020年6月4日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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