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福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説21~「深夜・休日労働手当」の続き

最終更新: 6月27日

<本日の内容>

1 判例・裁判例-日本郵便(時給制契約社員ら)事件


1 判例・裁判例-日本郵便(時給制契約社員ら)事件

 労働基準法(37条1項本文,4項)が事業主に支給を義務づける深夜・休日勤務手当ではありませんが,年末年始勤務手当の支給・不支給が改正前の労働契約法20条に照らし不合理ではないかと争われた事案を紹介します(日本郵便(時給制契約社員ら)事件・東京高判平成30・12・13労判1198号45頁)。


 会社は郵便事業を取り扱っており,訴えたのは時給制の有期雇用労働者らです。有期雇用労働者らは,会社の正規労働者全体ではなく,会社の新人事制度でいう新一般職(窓口営業,郵便内務,郵便外務又は各種事務等の標準的な業務に従事する者であって,役職層への登用はなく,勤務地は原則として転居を伴う転勤がない範囲とするもの。)という正規労働者を比較対象としています。

 この会社が支給する年末年始勤務手当の内容は,12月29日から翌年の1月3日までの間において実際に勤務した時に支給するもので,その額は,12月29日から12月31日までは1日4000円,1月1日から1月3日までは1日5000円でした。支給対象は正社員のみです。

 裁判で,この年末年始勤務手当の趣旨は,多くの労働者が年末年始を休日として過ごしているのに対し,この会社においては,年賀状の準備及び配達等の期間として,年間を通じて最繁忙時期となっていて,その時期に実際に勤務した労働者に対し,通常の労働の対価としての基本給等に加えて,多くの国民が休日の中で最繁忙時期の労働に従事したことに対する対価として支払われるものとされています。そして,こうした年末年始勤務手当の趣旨は,会社を訴えた時給制の有期雇用労働者にも妥当しないとはいえず,したがって,年末年始勤務手当を正規労働者のみに支払い, 会社を訴えた時給制の有期雇用労働者らに支払わないことは,改正前の労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとしています。

 興味深いのは,上記の平成30年東京高裁判決の第一審判決(東京地判平成29・9・14労判1164号5頁)は,年末年始勤務手当を正規労働者のみに支払い,会社を訴えた時給制の有期雇用労働者らに支払わないことは,改正前の労働契約法20条にいう不合理であるとしつつ,年末年始勤務手当には,長期雇用への動機付けという正規労働者にのみあてはまる趣旨がないとはいえないなどとして,会社を訴えた時給制の有期雇用労働者らに正規労働者に支給される年末年始勤務手当の8割相当額の支払いを求めたのに対し, その控訴審である上記平成30年東京高裁判決は正規労働者と同じ内容の支払いを求めています。判断の分かれ目は,年末年始勤務手当の趣旨(性質・目的)及びそれに照らした適切な考慮要素の考え方にあると思われます。


2020年5月26日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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