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  • 執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が未払残業代を解説~休憩,休日

★未払残業代請求の基礎知識についてはこちらをご覧ください。

<本日の内容>

1 休憩ー休憩の長さ・位置

2 休憩ー一斉付与の原則

3 休憩ー一斉付与の例外

4 休憩ー一斉付与の例外ー在宅勤務,テレワーク

5 休憩ー自由利用の原則

6 休日ー週休1日の原則

7 休日ー労働基準法における国民の祝日,週休2日制の位置づけ

8 休日ー週休制の運用状況

9 休日ー法定休日の特定

10 休日ー法定休日が特定されていないときの法定休日

11 休日ー暦日休日の例外

12 休日ー変形週休制


1 休憩ー休憩の長さ・位置

 使用者は,労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分,8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされています(労働基準法34条1項)。

 休憩時間の位置について,労働基準法は「労働時間の途中に与えなければならない」(労働基準法34条1項)としていますので,労働時間の終了後にまとめて休憩時間を与えても,法が要請する休憩時間の付与とはされません(水町勇一郎『詳解労働法』(東京大学出版会,2019年)658頁)。もっとも,休憩時間の位置を一定としたり,特定することは労基法上求められておりません。労働基準法89条1号も,休憩時間について就業規則の絶対的必要記載としていますが,その内容は,「休憩時間…に関する事項」とし, 休憩時間の位置を一定としたり,特定することまで求めていません。労働時間の途中でさえあればどの時点で付与してもよく,分割して与えることも可能です(水町・前掲658頁)。


 時間外労働によって労働時間を延長させて8時間を超える労働をさせる場合,所定労働時間の途中に法の要請を超えて1時間の休憩を与えていれば,その休憩時間をもって8時間を超える場合の休憩時間がすでに付与されていることなります。一方, 所定労働時間の途中に1時間の休憩を与えていなければ,時間外労働が終了する前までに,不足する休憩時間(所定労働時間内に付与した休憩が45分のときは残り15分)を与えなければなりません(水町・前掲658頁)。


 なお,①運送・郵便・信書便の事業の長距離乗務員,②屋内勤務者30人未満の郵便局における郵便窓口業務に従事する者等については,業務の性質上,休憩を与えないことができるとされています(労働基準法施行規則32条1項)。また,上記①の乗務員に該当しない乗務員について,業務の性質上,休憩時間を与えることができないと認められる場合,その勤務中における停車時間,折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が労働基準法34条1項に規定する休憩時間に相当するときは,休憩時間を与えないことができるとされています(労働基準法施行規則32条2項)。


2 休憩ー一斉付与の原則

 休憩時間は,労働者に一斉に与えなければならないとされています(労働基準法34条2項本文)。一斉付与の原則といわれるもので,その趣旨は,休憩時間の効果をあげ,労働時間・休憩時間の監督の便宜のためとされます。一斉付与の単位は事業場とされています。


3 休憩ー一斉付与の例外

 一斉付与の例外として,事業場の過半数組合またはそれがないときは過半数代表者との労使協定で,一斉に休憩を与えない労働者の範囲,その労働者への休憩の与え方を定めたときは,休憩を一斉に付与しなくてよいとされます(労働基準法34条2項ただし書,労働基準法施行規則15条1項)。

 また,運送業,商業,金融業,映画・演劇業,保健衛生,旅館等の事業の労働者については,事業の性質上,一斉付与が困難であるとして,労使協定によらず休憩を一斉に付与しなくてよいとされています(労働基準法40条,労働基準法施行規則31条)。


4 休憩ー一斉付与の例外ー在宅勤務,テレワーク

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で急速に普及した,労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(「テレワーク」。テレワークの形態としては,在宅勤務,サテライトオフィス勤務,モバイル勤務など。)に関し,厚生労働省は,「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平30・2・22策定)を策定しています。

 その中では,テレワークを行う労働者について,労使協定により一斉付与の原則を適用除外とすることが可能であるとされています。


5 休憩ー自由利用の原則

 使用者は,休憩時間を労働者に自由に利用させなければならないとされます(労働基準法34条3項)。自由利用の原則といわれるものです。休憩時間とは,労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されたる時間のことであり,労働基準法はこの規定で自由利用の原則を宣明しています。


 休憩時間が,労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されたる時間のことである以上,電話番など労働からの解放がない場合には,休憩時間とはされず,さらに労働基準法上の労働時間として労働時間規制を受けることとなります。この点は,労働者が使用者に対して未払残業代を請求するとき,休憩時間であるのか,あるいは労働時間であるのかという論点となることがあります。


6 休日ー週休1日の原則

 労働基準法では,使用者は,労働者に対して,毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています(労働基準法35条1項)。

 「毎週」とは「7日の期間毎に」という意味ですが,その始点が就業規則その他に別段の定めがないときは,日曜日から土曜日までの暦週をいうとされています。また,「休日」は,暦日(0時から24時までの24時間)をいうとされています(昭23・4・5基発535号)。したがって,就業規則その他に別段の定めがないかぎり,日曜日から始まって土曜日までの1週の間に,少なくとも暦日1日の休日を与えるという週休1日の原則を採用するのが労働基準法35条1項となります。


7 休日ー労働基準法における国民の祝日,週休2日制の位置づけ

 国民の祝日に関する法律が定める「国民の祝日」を「休日」とすることを労働基準法は求めていません(水町勇一郎『詳解労働法』(東京大学出版会,2019年)661,662頁)。多くの企業では,就業規則の「休日」の1つとして「国民の祝日に関する法律に定められた休日」を定めることで,国民の祝日をその企業の休日としています。


 また,週休2日制の普及に向けた労働基準法改正で,週法定労働時間が現在の40時間へと短縮されて行きましたが(労働基準法32条1項),休日規制として労基準法が義務づけるのは週休1日制であり,週休2日制は義務づけられていません。したがって,週休2日制を採用する企業は,そのうちの1日が労働基準法の要請に合致する法定休日,もう1日が労働基準法の要請によらない法定外休日(所定休日)ということになります。


8 休日ー週休制の運用状況

 厚生労働省が実施した平成31年の調査よれば,「何らかの週休日2制」を採用している企業は全体で82.1%となっています。

 「完全週休日2制」を採用している企業は全体で44.3%で,従業員数1000人以上の企業では63.6%,300~999人で56.3%,100~299人で51.0%,3099人で40.3%となっています。



9 休日ー法定休日の特定

 労働基準法89条1号は,「休日…に関する事項」を必要的記載事項としていますが,労働基準法上,週休1日として休日となる日,またどの日であれ休日となる日の特定のいずれも義務づけていません(水町・前掲661~663頁)。もっとも,解釈例規では,特定することが法の趣旨に沿うものであるから,就業規則の中で単に1週間に1日といっただけでなく,具体的に一定の日を休日と特定するのが望ましいとしています(昭63・3・14基発150号)。それでも,就業規則で,例えば「法定休日を上回る休日は所定休日とする。」といった定めを置くにとどめ,休日を特定しない記載をみることがあります。


10 休日ー法定休日が特定されていないときの法定休日

 休日の特定に関連し,例えば土日休みの週休2日制を採用する企業で法定休日が就業規則その他で特定されていないときにどの日を法定休日とするか,休日労働の割増賃金の請求にあたっては重要となります。

 この点について,行政解釈の考え方によると,暦週である日曜から土曜までを基準として,①日曜に出勤した場合には, 暦週初日の日曜が法定外休日, 暦週最終日の土曜日が法定休日,日曜の労働は法定外休日労働となり,②土曜に出勤した場合には, 暦週初日の日曜が法定休日, 暦週最終日の土曜が法定外休日,土曜の労働は法定外休日労働となるとする見解もあります(山川隆一=渡辺弘編『最新裁判実務体系7 労働関係訴訟Ⅰ』(青林書院,2018年)419頁(深見敏正・薄井真由子))。


11 休日ー暦日休日の例外

 労働基準法における「休日」は,暦日(0時から24時までの24時間)をいうと述べましたが,その例外とされるものが解釈例規で認められています。

 第1に,一定の要件を満たす番方編成による交替制,第2に,タクシー・トラック・バスなどの自動車運転者,第3に,旅館業における一定の要件を満たす労働者です(水町・前掲662,663頁)。


12 休日ー変形週休制

 労働基準法は,「前項の規定は,四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」(労働基準法35条2項)と定め, 週休1日の原則(労働基準法35条1項)ではなく変形週休制(4週4日休制)を採用することも許容しています。

 この変形週休制を採用するときは,使用者は,就業規則その他において,4日以上の休日を与えることとする4週間の起算日を明らかにする必要があります(労働基準法施行規則12条の2第2項)。例えば,就業規則で「令和2年4月〇日を起算日とする4週間を通じて4日」と記載することが考えられます。

 変形週休制の単位となる4週間のうちのどの日を法定休日とするかあらかじめ特定することは,労基法上求められておりませんが, 解釈例規で,具体的に一定の日を休日と特定するのが望ましいとされるのは,週休1日の場合と同様です。


2020年7月11日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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