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福岡の弁護士が未払残業代を解説~「ジョブ型」雇用と使用者の労働時間適正把握義務

最終更新: 17時間前

<本日の内容>

1 2020年6月8日付日本経済新聞朝刊の記事

2 使用者による労働者の労働時間を適正に把握する義務

3 使用者の労働時間適正把握義務の目的

4 使用者の労働時間適正把握義務の対象

5 ジョブ型雇用,在宅勤務における労働者の適切な時間管理


1 2020年6月8日付日本経済新聞朝刊の記事

 2020年6月8日付日本経済新聞朝刊では,新型コロナウイルス感染拡大を機に普及した在宅勤務の定着に向けて,企業が社内制度の見直しに動き始めたとの記事が掲載されていました。以前,本ブログでも,同一労働同一賃金を検討する中で,富士通や日立製作所のジョブ型雇用移行の取り組みについて取り上げています。


福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説24~賃金の決定基準の相違

 日本経済新聞朝刊の記事では,富士通や日立製作所の取り組みについて再度言及があり,さらに資生堂が,少なくとも約8000人のオフィス勤務の一般社員を対象に2021年1月から「ジョブ型」雇用に移行するとありました。

 記事では,こうした動きの背景を,「国内企業の多くは労働法制の制約もあり労働時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していた。しかし,会社でない場所で働く社員を時間で管理するのが難しく,労働基準法で定められた残業代支払いルールに抵触する恐れもあった。こうした問題を解決するため,企業は職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示し,その達成度合いなどをみる『ジョブ型』雇用の導入を進めている」と分析しています。


2 使用者による労働者の労働時間を適正に把握する義務

 労働者の評価を労働時間ではなく職務内容で行うというのは良いとしても,労働法の理解に関し,この記事は誤解を招くようにも読めましたので,補足して説明します。すでに別のブログでもとりあげていますので,詳細についてはそちらも参照ください。


福岡の弁護士が未払残業代を解説~働き方改革による時間外労働規制,労働時間適正把握義務

 

 労働基準法は,使用者に労働者の労働時間を適正に把握する責務を課しているとされています。この使用者による労働時間適正把握の責務は,厚生労働省による「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13・4・6基発339号)の策定を経て,2018(平成30)年の働き方改革関連法により,労働安全衛生法に使用者の義務とする規定が置かれました(労働安全衛生法66条の8の3,労働安全規則52条の7の3)。

3 使用者の労働時間適正把握義務の目的

 今回の改正で労働安全衛生法に置かれた使用者の労働時間適正把握義務については,未払残業代,すなわちサービス残業対策から労働者の健康確保を目的とするものに改められたと説明されることがあります(水町勇一郎『詳解労働法』(東京大学出版会,2019年)655,656頁)。労働安全衛生法66条の8の3では,この使用者の労働時間適正把握義務は,労働者の健康の保持を考慮して一定の要件に該当する労働者に対し医師による面接指導を実施するために行うもの,とされています。


4 使用者の労働時間適正把握義務の対象

 使用者の労働時間適正把握義務の位置づけが未払残業代残業対策から労働者の健康確保を目的とするのがものに改められたことから,労働安全衛生法における使用者の労働時間適正把握義務の対象には,割増賃金の支払いの対象となっていない管理監督者(労働基準法41条2号)や,事業場外労働のみなし制の適用者(労働基準法38条の2)なども含まれるとされました(平30・12・28基発16号)(水町・前掲656頁)。

 さらに,どのような人事評価制度であっても,労働者の健康確保は変わらず求められますから,使用者が労働者を職務内容で評価することとなろうとも,労基法上の労働時間規制の適用除外とされる管理監督者なども含む労働者の労働時間を把握する義務が求められることとなります。


5 ジョブ型雇用,在宅勤務における労働者の適切な時間管理

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止する工夫の中で社会が不可逆的に変化し,あるいは現行法は社会状況にそぐわない部分を抱えてしまったのかもしれません。その観点から現行法を見直すべきかどうかの議論は必要かもしれませんが,しかし,現状では上述のとおりに理解するしかなく,使用者の義務が解除されることはありません。ジョブ型雇用であっても,時間の把握が困難な在宅勤務であっても,それは,労働者の健康確保という目的のための使用者による労働者の適切な時間管理の中で実施されなければなりませんので,注意してください。


2020年6月9日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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