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【遺産分割調停・審判の始め方は?】遺産分割調停・審判を始めるときのポイント・管轄裁判所について弁護士が解説します

【執筆した弁護士】

古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士

1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。

事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP

日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報


                                   

<本日の内容>

1 遺産分割調停・審判開始のポイント・管轄裁判所

 1-1 遺産分割概説

 1-2 遺産分割調停開始のポイント・管轄裁判所

 1-3 遺産分割の調停に代わる審判開始のポイント・管轄裁判所

 1-4 遺産分割審判開始のポイント・管轄裁判所

2 管轄区域表

                                   

1 遺産分割調停・審判開始のポイント・管轄裁判所

1-1 遺産分割概説

 「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」(民法907条1項)とされています。ここでいう協議が,遺産分割協議です。

 遺産分割協議が整わない場合,各共同相続人は,遺産分割を家庭裁判所に求めることができ(民法907条2項本文),このときは家庭裁判所による審判または調停によって遺産は分割されることとなります。この審判・調停は,遺産分割審判遺産分割調停などと呼ばれることがあります。なお,遺産分割について,法律上は「遺産の分割」という名称が与えられています(家事事件手続法・別表第2十二)。 

 これらの他,遺産分割調停のなかで調停に代わる審判がなされることもあり(家事事件手続法284条),この遺産分割の調停に代わる審判で遺産が分割されることもあります。


 遺産分割協議は,共同相続人(や事案により包括受遺者,相続分の譲受人など。)の合意による遺産分割です。当事者の一部を欠く遺産分割協議は無効であり,協議が有効に成立するには共同相続人全員の合意が必要です。なお,遺産分割では「遺産分割自由の原則」があるとされていて,法定相続分・指定相続分と異なる遺産分割も可能とされています。


 遺産分割調停は,家事調停と言われるもののひとつです(家事事件手続法244条)。家事調停では,調停委員会(1人の裁判官と通常2人の家事調停委員で構成されます。家事事件手続法248条1項)が,各共同相続人の話を聞くなどして合意を助け,その結果,合意すれば,それによって調停が成立します。これが遺産分割調停です。

 遺産分割調停が成立しなかった場合,調停不成立となり,家事調停は終了となります(家事事件手続法272条1項)。


 実務でも件数は多くないのですが,遺産分割調停が成立する見込みはないものの家庭裁判所が相当と認めるときには,家庭裁判所は遺産分割の調停に代わる審判することができます(家事事件手続法284条1項)。この審判に対しては,不服がある当事者が2週間以内に異議を申し立てれば審判の効力は失われます(家事事件手続法286条)。そうした異議が申し立てられなかったりすると,審判が確定します。これが遺産分割の調停に代わる審判です。

 これと後述する遺産分割の審判とは別物です。調停に代わる審判は,あくまで遺産分割調停の中で行われるものですので,混同しないようにしてください。


 遺産分割の審判にいう「審判」とは,家庭裁判所の終局的な判断をする裁判で,この点では訴訟でいう判決に相当するものです。ただ,家庭裁判所が審判をすることができる事件,すなわち家事審判事項は家事事件手続法で記載されているものに限定されています。そして,遺産分割は,上述のとおり「遺産の分割」(家事事件手続法・別表第2十二)として家事審判事項とされていますので(家事事件手続法39条),遺産分割について家庭裁判所は審判をすることができます。

 審判と訴訟(判決)の違いを実質的に説明すると,審判は家事審判事項の前提となる権利義務の存否を確定するものではなく(もっとも,審判では前提事項の存否は確定しませんが,前提事項の存否を審理した上で判断することは差し支えないとされています。),審判事項の具体的内容を定める処分であるのに対し,訴訟権利義務の存否を確定するものという違いがあります。したがって,遺産分割の前提事項である遺産の範囲に争いがあるときには,審判ではなく訴訟を提起することとなります。 


 上述のうち,裁判所での手続となるのは,遺産分割協議を除く,遺産分割調停遺産分割審判遺産分割の調停に代わる審判です。


1-2 遺産分割調停開始のポイント・管轄裁判所

 遺産分割調停のためには家事調停を始めることとなりますが(家事事件手続法244条),家事調停は申立書を家庭裁判所に提出して始めます(家事事件手続法255条)。

 

★遺産分割調停の申立書の書式や記載例は裁判所のホームページに掲載されています。以下は,当事務所の所在地である福岡市を管轄する福岡家庭裁判所の申立書の書式と記載例です。福岡家庭裁判所に申立てをするときにはこの書式を必ず使わなければならないというわけではありませんが,書式の利用は申立ての省力化にもなり,有用です。

 遺産分割申立書(福岡家庭裁判所)

 遺産分割申立書記載例(福岡家庭裁判所)


★遺産分割調停の申立てにあたっては,申立書のほか,以下のような書類の添付が求められるのが通常です。

①各種目録(当事者目録,遺産目録,特別受益目録,分割済遺産目録)

遺産分割申立書(福岡家庭裁判所)

②戸籍・住民票 

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の住民票

※相続人確定のため,上記に加えさらに別の戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本の提出が必要となる場合があります。

③遺産関係

・不動産登記事項証明書(不動産関係)

・固定資産評価証明書(不動産関係)

・不動産の位置図(公図・住宅地図等)(不動産関係)

・預貯金通帳の写し(あるいは残高証明書・取引履歴など)(預貯金)

・株式,投資信託等の内容を示す書面の写し(あるいは取引残高通知書など)(株式等)

・その他の遺産の内容を示す書面の写し

④相続関係図等

・相続関係図 ※相続関係図見本(名古屋家庭裁判所)

・遺言書の写し

・遺産分割協議書(案)の写し

・相続税申告書の写し

⑤その他(附属書類)

・事情説明書

・進行に関する連絡表(申立人用)

事情説明書・進行に関する連絡表(申立人用)(福岡家庭裁判所)

 添付書類の詳細につきましては,申立てを行う家庭裁判所のホームページの記載等で確認ください。


★遺産分割調停の申立てには,収入印紙1200円(被相続人1名)が必要となります。このほか郵便切手も必要ですが,どの額面の切手が何枚必要となるかは各家庭裁判所によって異なりますので,申立てを行う家庭裁判所のホームページの記載等で確認ください。


 そして,家事調停は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属するとされています(家事手続法245条1項前段)。これは,調停の開始を求める当事者が,調停に関与させられる相手方のもとに出向いてすることが公平の理念に合致するし,調停の開始を求める当事者の負担が相手方に比して大きくなる方が話合いがまとまりやすいなどが根拠とされています。

 したがって,例えば,福岡市に住所がある方が遺産分割調停のための家事調停をするときでも,相手方となる共同相続人の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄となり,その家庭裁判所に遺産分割調停のための家事調停の申立書を提出することとなります。


 なお,遺産分割で共同相続人が2つ以上のグループに分かれて争われることがありますが,遺産分割調停のための家事調停の管轄を考慮し,申立てをする相続人と同じグループの共同相続人をあえて相手方とすることがあります。具体的には,共同相続人が3人でうち2人が福岡市に,残る1人が京都市にそれぞれ住所があり,福岡市の2人が遺産分割について考えが一致し,京都市の相続人と争っている場合,福岡市の相続人の1人がもう1人の福岡市の相続人を,同じグループながら相手方とすれば,福岡市を管轄する福岡家庭裁判所に遺産分割調停のための家事調停の申立書を提出し,調停を始めることができます。


 家事調停は当事者の協議によって紛争解決を目指すものですので,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所のほか,当事者が合意で定める家庭裁判所にも管轄が認められています(家事事件手続法245条1項後段)。したがって,遺産分割調停のための家事調停は,共同相続人が合意して定める家庭裁判所も管轄があり,その家庭裁判所に遺産分割調停のための家事調停の申立書を提出して開始することも可能です。


★この管轄の合意は,当事者の意思を明確にするため口頭ですることは許されず,書面等でしなければならないとされています(家事事件手続法245条2項,民事訴訟法11条2項・3項)。以下は福岡家庭裁判所の管轄の合意の書式です。

 管轄合意書


 また,当事者の便宜や事案の適切な解決を図るため,遺産分割調停のための家事調停の申立てを受けた家庭裁判所は,「事件を処理するために特に必要がある」と判断した場合には,管轄権がなくても,当事者等の意見を聴いたうえで,遺産分割調停のための家事調停を始めることができます(「自庁処理」といいます。家事事件手続法9条1項ただし書,規則8条1項)。そこで,例えば,相手方となる共同相続人の住所地を管轄する家庭裁判所が福岡市を管轄する家庭裁判所である福岡家庭裁判所でなくても,福岡市に住所がある相続人が遺産分割調停のための家事調停の申立書を福岡家庭裁判所に提出し,自庁処理により福岡家庭裁判所が遺産分割調停のための家事調停を始めることがあります。自庁処理を求めるときは,自庁処理を求める理由を記載した「自庁処理上申書」という書面を申立書とともに提出する運用が見られます。


1-3 遺産分割の調停に代わる審判開始のポイント・管轄裁判所

 遺産分割調停のための家事調停が成立する見込みはないものの家庭裁判所が相当と認めるときには,家庭裁判所は「調停に代わる審判」をすることができますが,この審判をするかどうかは,遺産分割調停のための家事調停をしていた家庭裁判所の職権によります。当事者の申立てによって始まるものではありません。


1-4 遺産分割審判開始のポイント・管轄裁判所

 夫婦が離婚をする場合,協議が整わなかったときにいきなり離婚訴訟となるとはされていません。離婚訴訟を提起する前に,まず家庭裁判所に家事調停をしなければならないとされています(「調停前置主義」といいます。家事事件手続法257条1項)。これは,家庭に関する紛争で訴訟の提起が可能な事項であっても,いきなり訴訟によって公開の法廷で争わせることは家庭の平和・健全な親族共同関係の維持という観点から望ましくなく,まずは当事者の互譲による円満かつ自主的な解決の措置を講じるべきであるという考え方を法律が採用しているためです。

 しかし,調停前置主義が適用されるのは訴訟提起が予定されている事件であり,訴訟ではなく家事審判事項とされる遺産分割については調停前置主義の適用はなく,調停を経ずに審判を始めることが可能です。


 遺産分割審判のためには家事審判を始めることとなりますが,家事審判は申立書を家庭裁判所に提出して始めます(家事事件手続法49条)。


★遺産分割審判の申立書の書式や記載例は裁判所のホームページに掲載されています。以下は福岡家庭裁判所の申立書の書式と記載例です。遺産分割調停と同じ書式となっています。

 遺産分割申立書(福岡家庭裁判所)

 遺産分割申立書記載例(福岡家庭裁判所)


 そして,遺産分割審判のための家事審判は,相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属するとされています(家事手続法191条1項)。したがって,例えば,福岡市に住所がある方が遺産分割審判をするときでも,相続が開始した地,すなわち亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する管轄する家庭裁判所申立書を提出することとなります。遺産分割調停とは管轄の定め方が異なりますので,注意してください。


 ただ,遺産分割審判のための家事審判では,当事者が合意で定める家庭裁判所にも管轄が認められています(家事事件手続法66条1項)。したがって,遺産分割審判のための家事審判は,共同相続人が合意して定める家庭裁判所も管轄があり,その家庭裁判所に遺産分割審判のための家事審判の申立書を提出して開始することも可能です。

 この管轄の合意は,当事者の意思を明確にするため口頭ですることは許されず,書面等でしなければならないとされています(家事事件手続法66条2項,民事訴訟法11条2項・3項)。


 また,当事者の便宜や事案の適切な解決を図るため,遺産分割審判のための家事審判の申立てを受けた家庭裁判所は,「事件を処理するために特に必要がある」と判断した場合には,管轄権がなくても,当事者等の意見を聴いたうえで,遺産分割審判のための家事審判を始めることができます(「自庁処理」。家事事件手続法9条1項ただし書,規則8条1項)。


 上述のとおり,家事審判事項とされる遺産分割については調停前置主義の適用はなく,調停を経ずに審判を始めることが可能です。もっとも,遺産分割に関しては,家庭裁判所は,当事者の意見を聴いて,いつでも職権で事件を家事調停に付することができます(「付調停」といいます。家事事件手続法274条1項)。実務では,遺産分割調停を経ずに審判をする理由などがない限り,家庭裁判所は審判の申立てがあっても事件を調停に付する傾向があります。

 こうした付調停の実務を考慮するときは,遺産分割に関し調停前置主義はなくとも,まずは遺産分割調停のための家事調停を申立てることから始めることが多く,遺産分割審判のための家事審判は,遺産分割調停のための家事調停が不成立に終わり,それが移行して始まることが実際です。

 このときは,遺産分割調停のための家事調停の申立てのときに,遺産分割審判のための家事審判の申立てがあったものとみなされ,事件は調停不成立によって当然に遺産分割審判のための家事審判に移行します(家事事件手続法272条4項)。改めて遺産分割審判のための家事審判の申立書を提出する必要はありません。遺産分割審判のための家事審判をするのは,遺産分割調停のための家事調停が係属していた家庭裁判所です。なお,遺産分割調停のための家事調停が係属していた家庭裁判所に遺産分割審判のための家事審判の管轄がないときは,上述の自庁処理をすることとなります。


2 管轄区域表

 遺産分割調停・審判の管轄家庭裁判所については,上述のとおりです。


 管轄を判断するにあたり,それぞれの住所地を管轄する家庭裁判所がどこになるのか調べることとなりますが,それは法律で定められています(「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律」という法律です。)。


★裁判所のホームページには管轄区域表が掲載されています。福岡・佐賀県内の裁判所の管轄区域表は,次のとおりです。

福岡県内の管轄区域表

佐賀県内の管轄区域表


 当事務所は福岡市にあるのですが,その近隣の地域を管轄する家庭裁判所を参考までに記載しておきます。

福岡県

福岡市,筑紫野市,春日市,大野城市,太宰府市,古賀市,糸島市,那珂川市,糟屋郡(宇美町 篠栗町 志免町 須恵町 新宮町 久山町 粕屋町),宗像市,福津市

 →福岡家庭裁判所(住所:福岡県福岡市中央区六本松4-2-4)が管轄家庭裁判所


久留米市,小郡市,三井郡(大刀洗町)

 →福岡家庭裁判所久留米支部(住所:福岡県久留米市篠山町21)が管轄家庭裁判所


佐賀県

佐賀市,多久市,小城市,神埼市,神埼郡(吉野ヶ里町),鳥栖市,三養基郡(基山町 上峰町 みやき町)

 →佐賀家庭裁判所(住所:佐賀県佐賀市中の小路3-22)が管轄家庭裁判所


唐津市

 →佐賀家庭裁判所唐津支部(住所:佐賀県唐津市大名小路1-1)が管轄家庭裁判所


遺産相続・遺言の基礎知識については,こちらで解説しています。

福岡の弁護士が遺産相続・遺言の仕組みを分かりやすく・詳しく解説します


                                   

更新日 2020年10月17日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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TEL:092-707-1255


 当事務所は,遺産分割事件を取り扱っています。


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