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  • 執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が同一労働同一賃金を分かりやすく・詳しく解説~「リフレッシュ休暇」など,「教育訓練」,「安全管理」のさらにさらに続き

【執筆した弁護士】

古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士

1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。

事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP

日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報


★同一労働同一賃金についてまとめた記事は以下を参照ください。

<本日の内容>

1 判例・裁判例ー学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件


1 判例・裁判例ー学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件

 私傷病で欠勤した場合の取扱いの相違が争われたものとして紹介した事案は覚えていますでしょうか(学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件・大阪高判平成31・2・15労判1199号5頁)。

 この事案では,夏期特別休暇の付与・不付与が改正前の労働契約法20条に照らし不合理ではないか争われました。

 再確認すると,訴えられたのは学校法人です。訴えたのはフルタイムで勤務する1年契約の有期雇用労働者です。アルバイト職員としての扱いで,給料は時給制でした。この裁判では,有期雇用労働者が比較の対象とすべきと主張した正規労働者ではなく,「比較対象者は客観的に定まるもの」であるとして,学校法人の正職員(学校法人の職員で雇用期間の定めがない職員は正職員のみ。)全体を比較対象としています。


 この学校法人では,正職員には夏期(7月1日から9月30日まで)に5日の夏期特別有給休暇が付与されるのに対し,アルバイト職員には付与されていませんでした。

 裁判で,この夏期特別有給休暇の趣旨は,「わが国の蒸し暑い夏においては,その時期に職務に従事することは体力的に負担が大きく,休暇を付与し,心身のリフレッシュを図らせることには十分な必要性及び合理性が認められる。また,いわゆる旧盆の時期には,お盆の行事等で多くの国民が帰省し,子供が夏休みであることから家族旅行に出かけることも多いことは,公知の事実といえる。このため,官公署や企業が夏期の特別休暇制度を設けていることも,公知の事実といえる。被控訴人における夏期特別有給休暇が,このような一般的な夏期特別休暇とその趣旨を異にするとうかがわせる事情はない」としています。


 そして,アルバイト職員であってもフルタイムで勤務している者は,正職員との職務の違いや労働時間の相違はあるにせよ,夏期に相当程度の疲労を感ずるに至ることは想像に難くないとして,少なくとも,学校法人を訴えた,年間を通してフルタイム勤務のアルバイト職員に対し,正職員と同様の夏期特別有給休暇を付与しないことは不合理であるとしています。

 判決は,私傷病欠勤の賃金の検討のときには,フルタイム勤務で契約期間を更新しているアルバイト職員であることを重視していましたが, 夏期特別休暇の検討にあたっては,フルタイム勤務のアルバイト職員であることを重視しています。これはそれぞれの労働条件の趣旨の理解の違いによるものでしょう。

 しかし,ではフルタイム勤務でないアルバイト職員には,夏期特別休暇を付与しなくても不合理ではないのかというと,この判決の考えは一見不合理ではないとするようにも読めます。しかし,「少なくとも,控訴人のように年間を通してフルタイムで勤務しているアルバイト職員に対し,正職員と同様の夏期特別有給休暇を付与しないことは不合理であるというほかない」というように,「少なくとも」という言葉で慎重に判断の射程を限定しているようにも見えます(裁判の目的は,当事者の請求の存否について判断することであり,裁判の当事者でない者が請求できるかどうか判断する必要はありません。)。

 夏期特別有給休暇の不付与については,以上のとおり判示されたわけですが,夏期特別有給休暇を付与されなかったことの損害については, 夏期特別有給休暇が付与されなかったことにより賃金相当額の損害を被った事実,すなわち,アルバイト職員が無給の休暇を取得したが,夏期特別有給休暇が付与されていれば同休暇により有給の休暇を取得し賃金が支給されたであろう事実の主張立証の有無云々ということには言及せず,有給休暇が取得できなかったことで,平均日額賃金に正職員であれば付与された夏期特別有給休暇の日数を乗じた額の損害が認められるとしています。


更新日 2020年9月9日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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