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執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が同一労働同一賃金を分かりやすく・詳しく解説~「福利厚生施設」

【執筆した弁護士】

古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士

1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。

事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP

日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報


★同一労働同一賃金についてまとめた記事は以下を参照ください。


<本日の内容>

1 福利厚生施設の利用についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

2 福利厚生施設の利用に関するパートタイム・有期雇用労働法8条と12条


1 福利厚生施設の利用についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 本日は福利厚生施設の利用についてパートタイム・有期雇用労働法8条に照らし検討します。

 結論から言ってしまえば,職場が同じであれば,福利厚生施設の利用において,正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで区別する理由はありません。


 ①職場で働く労働者への勤務に伴う便宜として提供されるという福利厚生施設(給食施設,休憩室,更衣室)の性質・目的からして,②その主な考慮要素は,同じ職場で労働しているかどうです。したがって,③同一の職場で働く正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者には,同一の利用を認めることが求められています(水町・前掲107,108頁)。同一労働同一賃金ガイドラインにも,「通常の労働者と同一の事業所で働く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の福利厚生施設の利用を認めなければならない。」とあります(第三の四(一))。福利厚生施設の利用について, 正規労働者とパートタイム・有期雇用労働者とで区別する理由はあまり思い浮かばず,上述の結論も理解しやすいものと思われます。


2 福利厚生施設の利用に関するパートタイム・有期雇用労働法8条と12条

 ところで,パートタイム・有期雇用労働法12条(福利厚生施設)には,次のような定めがあります。


 事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。


 上記「健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるもの」については,パートタイム・有期雇用労働法施行規則5条で次のように定められています。


  法第十二条の厚生労働省令で定める福利厚生施設は、次に掲げるものとする。

 一 給食施設

 二 休憩室

 三 更衣室


 このパートタイム・有期雇用労働法12条も,今般の同一労働同一賃金を含む働き方改革関連法案の中で,福利厚生施設の利用機会配慮義務(「与えるように配慮しなければならない」)が,義務規定(「与えなければならない」)と改正され,さらに,その対象が有期雇用労働者にも広げられました。ただ,パートタイム労働者のみを適用対象とし,中身も利用機会配慮義務というものではありましたが,今回の改正前から存在していた規定です。


 労働法を継続的には学んでいない方が,パートタイム・有期雇用労働法8条の説明を聞いたうえで同法12条の規定を見ると,8条で決着のついた事項が,改めて12条で取り上げられているように感じるのではないでしょうか。その感覚は,私としてもそう間違っていないように思います。


 パートタイム労働法8条の問題点を踏まえて行われたのが今回の改正ということは,すでに述べました。他方,改正前のパートタイム労働法8条が制度として導入される前に,正規労働者とパートタイム労働者の待遇格差是正を目的として置かれたのが,要件など異なるところはありますが,現在の9条に該当する,パートタイム労働者であることを理由とする差別的取扱いの禁止規定です。

 この差別的取扱いの禁止も, 正規労働者とパートタイム労働者の待遇格差是正を目的とする点では共通するのですが,一定の要件を満たすパートタイム労働者を「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」として,そうした者については,パートタイム労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないとしており, 改正前のパートタイム労働法8条や現在のパートタイム・有期雇用労働法8条とは,アプローチの仕方が異なります。


 差別的取扱い禁止の規定は,改正前のパートタイム労働法8条や今回のパートタイム・有期雇用労働法8条の各改正のなかにあって併存されてきたわけですが,上述のパートタイム・有期雇用労働法12条(それと10条(賃金),12条(教育訓練)も。)は,この差別的取扱い禁止の規定との関連で置かれ,理解すべき規定と位置付けることができるものです。例えば,差別的取扱いの禁止の対象となるのは,今般の改正後でいえば「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」に限られますが, パートタイム・有期雇用労働法12条では,そのような要件までは必要なく,「その雇用する短時間・有期雇用労働者」を対象としてる,ということです。


 パートタイム・有期雇用労働法8条と同法9~12条は,目的を同じくするように見えてもアプローチが違う規定といえ,その意味でそれぞれ区別することはできます。ただ,他にどのような違いがあり,それぞれの規定の意義がどう違うのかなどさらに詳細に整理せよと言われると,なかなか難しいところです。その意味で,8条で決着のついた事項が,改めて12条で取り上げられているという感覚もそう間違いとは言い切れない,そのように思います。この点について,学説など確認できましたら,そのときにまた報告いたします。


更新日 2020年9月9日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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