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福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説28~「地域手当」

最終更新: 6月27日

<本日の内容>

1 新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に与える影響についての論考

2 地域手当のパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断


1 新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に与える影響についての論考

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に与える影響について,事態の経過や統計などの集計に合わせて識者の主張も散見されるようになっています。連合会長の神津里季生氏は,2008年のリーマンショックとの比較を問われて,2008年末から翌2009年の正月にかけて,派遣契約を切られて派遣先企業や派遣元企業の寮から追い出された人たちを支援する「年越し派遣村」が東京の日比谷公園にできたのが話題となるなど,当時「派遣切り」が社会問題となったが,今回また同じような事態が起きつつあり,当時の教訓は生かされていなかったのだと痛感していると述べています(中央公論6月号)。また,2020年5月30日付日本経済新聞朝刊でも紹介されていましたが,東京大学教授の玄田有史氏も,働き方改革では,同一労働同一賃金の原則のもと同一企業・団体における正規労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差の解消が目指されてきて,それは非正規か否かという職場での呼称の違いによる処遇に含まれる正当性のない格差を社会からなくしてゆく第一歩のはずだったが,雇用調整が不可避となったときにバッファの役割を依然として非正規労働者が担っている事実が,いま再び露見しようとしているとしています(同)。ただ, 玄田氏は,同じ論考で,従来増加傾向にあった65歳以上の高齢就業者が,感染リスクを考えて労働市場から撤退する「働き止め」の状況が始まっているとの指摘もしております。新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に大きな影響を与えた・与えつつあるのは事実でしょうが,その対処を考えるときは,どのように・どの部分に影響を与えたのか,きめ細かく見定める必要があるように思います。


2 地域手当のパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 さて,少しでも雇用環境に変化はあったかと今の座標を取ってみたら一歩も動いていないのかもしれないと慄然とする心境もありますが,そうした状況であるからこそ,同一労働同一賃金について説く本ブログの意味を再確認したところで,本日の検討に移ります。手当の最後,地域手当についてです。


 地域手当は,①特定の地域の物価の高さや寒冷対策費用など地域特有の支出を補填するために支給されるものです。そうした性質・目的に照らすと,②その主な考慮要素は,支給の対象となる特定の地域で働いているかどうかであり,正規労働者と非正規労働者とで区別する理由はありません。したがって,③同じ地域で働く正規労働者と非正規労働者には,同一の支給をすることが求められています(水町・前掲107頁)。同一労働同一賃金ガイドライン(第三の三(十))の問題となる例にも,「A社においては、通常の労働者であるXと有期雇用労働者であるYにはいずれも全国一律の基本給の体系を適用しており、かつ、いずれも転勤があるにもかかわらず、Yには地域手当を支給していない。」とあります。


 もっとも,地域手当は特定の地域で働くときに支給されるものであり,転勤などによって支給の有無が変わってくることもあることから,地域手当の支給に関して支給の有無に変更があり得る労働者と,支給の有無に変更がない労働者とで,支給方法に相違を設けることは問題ありません。同一労働同一賃金の問題とならない例にも,「A社においては、通常の労働者であるXについては、全国一律の基本給の体系を適用し、転勤があることから、地域の物価等を勘案した地域手当を支給しているが、一方で、有期雇用労働者であるYと短時間労働者であるZについては、それぞれの地域で採用し、それぞれの地域で基本給を設定しており、その中で地域の物価が基本給に盛り込まれているため、地域手当を支給していない。」とあります。


2020年6月2日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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