top of page
  • 執筆者の写真弁護士古賀象二郎

富士通,日立製作所の新しい取組み,そこでのパートタイム・有期雇用労働者の位置づけの考察

更新日:2020年8月25日

【執筆した弁護士】

古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士

1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。

事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP

日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報


<本日の内容>

1 富士通,日立製作所の新しい取組み,そこでのパートタイム・有期雇用労働者の位置づけの考察


1 富士通,日立製作所の新しい取組み,そこでのパートタイム・有期雇用労働者の位置づけの考察

 最近の新聞記事で,大手メーカーの職務給制度導入の記事をみなさんも見られたと思います。2020年5月10日の日本経済新聞朝刊では,富士通の記事が掲載されていました。富士通は2021年3月期から,職務を明確にして働く「ジョブ型」人事制度を導入するとのことで,課長以上の約1万5千人を対象に運用を始め,その後一般社員にも広げていくそうです。この「ジョブ型人事」は,従来の年功要素を完全に廃止し,職責で賃金を決めるもので,役割や権限による世界共通のレベルを決め,月額給与はレベルに応じるとされています。また,今月27日の日経新聞朝刊によると,日立製作所は,在宅勤務でも効率的に働けるよう人事制度を見直すとの記事がありました。職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示し,達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用を本格導入するとのことです。


 振り返って,いわゆる日本型雇用の転換は幾度も試みられていますし,その成果は必ずしも芳しいとの評価ではないように思われます。しかし,そうした歴史を踏まえても,新聞記事にあった今回の富士通,日立製作所の取り組みを興味深く読めたのは,両社とも新制度が内部完結していない点にあります。富士通では,役割や権限のレベルが世界共通とされるようですし,日立製作所も今回の改革の端緒は,グループ各社で独自にあった人事制度を世界共通の仕組みにしたことに遡ることができるとのことです。内部で完結した制度ではありませんので,装い(人事制度)だけ換えたが中身(運用)は従来とそう変わらないという過去見られた事態は起きにくいでしょう。その意味で,今回の富士通,日立製作所の改革は,(日本にとっては)新しい人事制度として定着して行く可能性があるように思われます。


 では,仮にこうした職務給制度が正規労働者の賃金決定基準となっていったとき,パートタイム・有期雇用労働者の賃金決定基準はどうなるのか。富士通,日立製作所の現状の人事制度に詳しくはありませんが,今後正規労働者の賃金決定基準が職務給制度となってゆく中で,パートタイム・有期雇用労働者の賃金決定基準が職務給制度となっていなければ,パートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断では,二重のチェックとしてまず第1のチェック,すなわち別制度とすることの合理性のチェックがまず行われます。しかし,正規労働者において職務の内容の明確化・共通化を志向し,そのうえで職務と賃金を結び付ける取組みを進める一方,比較的職務の内容が明確であることが多く職務給制度になじみやすいパートタイム・有期雇用労働者でそれをしないと説明するのは容易ではないように思われます。正規労働者においてそれなりに徹底した職務給制度導入する以上,パートタイム・有期雇用労働者もその職務により評価されるようになるのではないでしょうか。いずれの記事にもパートタイム・有期雇用労働者に関する記載はありませんでしたので,新制度の全体像を今後追っていきたいと思います。


更新日 2020年8月14日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


閲覧数:14回

 BLOG

bottom of page