【執筆した弁護士】
古賀 象二郎(こが・しょうじろう)弁護士
1974年,佐賀県鳥栖市生まれ。一橋大学経済学部を卒業後,民間企業に勤務。神戸大学法科大学院を経て,2009年に弁護士登録。
事務所名:古賀象二郎法律事務所(福岡市中央区) URL:事務所HP
日本弁護士連合会会員・福岡県弁護士会会員 URL:会員情報
<本日の内容>
1 「同一労働同一賃金」が目指すもの
2 働き方改革関連法の成立等
3 改正法の施行日,中小企業の事業主への適用猶予の有無
1 「同一労働同一賃金」が目指すもの等
「同一労働同一賃金」は,どういった問題を解決しようとしているのか。それは,正規労働者と非正規労働者との不合理な待遇格差の是正という問題(社会政策の側面)と,非正規労働者の能力発揮とそれに見合った賃金上昇を実現し,その結果としての需要拡大によりさらなる経済成長を図るという問題(経済政策の側面)の2つであるとされています。
「同一労働同一賃金」を規定するパートタイム・有期雇用労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の略称)1条は,法の目的を次のように定めています。
この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
もっとも,正規労働者と非正規労働者の待遇格差の問題についていえば,社会状況によりどのような非正規労働者を念頭に置くかに違いはあったにせよ,戦前より議論されていました。また,今回の改正前にも,パートタイム労働者についてはパートタイム労働法8条で,有期雇用労働者については労働契約法20条で,それぞれ正規労働者との待遇格差是正を図るための規定が置かれていました。ですので,今回の改正は,上述の目的を初めて法的課題としたものというよりも,上述の目的を実現すべく,その手段である従来規定に改良を加えたといえるように思います。
2 働き方改革関連法の成立等
「同一賃金同一労働」制度を含む働き方改革関連法は,2018(平成30)年6月に成立しました。
今回の法改正の経緯で極めて特徴的であったのは,改正法成立の直前に,改正前の労働契約法20条の均等待遇規定に関する最高裁判決が下されたことです(ハマキョウレックス事件(最二小判平30・6・1民集72巻2号88頁),長澤運輸事件(最二小判平30・6・1民集72巻2号202頁))。この最高裁判決は,判決後に成立した今回の改正法の重要な解釈指針とされています。
3 改正法の施行日,中小企業の事業主への適用猶予の有無
2018(平成30)年改正法の施行は,「同一労働同一賃金」制度に関係する部分につき,パートタイム・有期雇用労働法で2020(令和2)年4月1日です。ただし,中小企業の事業主については2021(令和3)年4月1日まで猶予されています。
他方,労働者派遣法の施行は2020(令和2)年4月1日で,中小企業の事業主への適用猶予はありません。これは,「派遣労働者についての均等・均衡待遇の確保は基本的に派遣先に雇用される労働者との関係で求められるものであり,派遣元事業主の規模等にかかわらず実現されるべきものであるからである」(水町勇一郎「『同一労働同一賃金』のすべて(新版)」(有斐閣,2019年)151頁)と説明されています。
★同一労働同一賃金について,こちらでさらに詳しく解説しています。
更新日 2020年9月16日
福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所
弁護士 古賀象二郎

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