• 弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説18~「精皆勤手当」の続き

最終更新: 6月24日

<本日の内容>

1 判例・裁判例-長澤運輸事件

2 判例・裁判例-井関松山製造所事件


1 判例・裁判例-長澤運輸事件

 精皆勤手当につきましては,改正前の労働契約法20条をめぐり,先日紹介した最高裁判例以外にも判例・裁判例がありますのでご紹介します。


 まず,運送会社の労働者で,その会社を定年後に嘱託社員として再雇用された者らが,会社に対し労働条件の不合理を主張した事案です(長澤運輸事件・最二小判平成30・6・1民集72巻2号202頁)。定年後に嘱託社員として再雇用された後も,定年前と同様に乗務員として勤務していて,職務の内容は正規労働者の乗務員と同じでした。

 定年後再雇用者の問題はまた後日取り上げるとして,この会社では,精皆勤手当(精勤手当)ついては,就業規則所定の休日を除いて出勤した者(満勤者)に精勤手当を支払うとし,その額は5000円としていました。定年後再雇用の嘱託乗務員には支給していません。

 精皆勤手当を支給することにより労働者の出勤を奨励することで,会社の業務のどの部分の円滑な遂行を特に確保しようとしているのかという観点からすると,この支給基準では,特段の限定はされていないと指摘できます。裁判では,この会社における精皆勤手当は,「その支給要件及び内容に照らせば,従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給されるものであるということができる」と判示しております。このような趣旨からすると,正規労働者の乗務員と定年後再雇用の嘱託乗務員とで皆勤を奨励する必要性に相違はなく,定年後再雇用の嘱託乗務員に精勤手当を支給しないことは不合理であるというのが結論です。

 余談ですが,「休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨」という部分は,当たり前のことを真面目に判示していて,個人的に味わい深く感じます(笑)


 判例・裁判例-井関松山製造所事件 

 次は,農業用機械器具の製造及び販売の会社の有期雇用労働者らが,会社に対し労働条件の不合理を主張した事案です(井関松山製造所事件・高松高判令和元・7・8労判1208号25頁)。この会社の精皆勤手当(精勤手当)は,月給日給者で,かつ,当該月皆勤者に限り支給するとして,その支給額は,月額基本給に1/68.11を乗じた金額(10円未満は切上げ)としていました。有期雇用労働者らの給料は時給制でしたので,精皆勤手当は支給されていませんでした。

 ポイントは,精皆勤手当の支給基準を,「月給日給者」という給与形態で定めていることです。裁判では,精皆勤手当の趣旨は,月給(精皆勤手当の支給対象ではない。)と月給日給の違いに着目し,欠勤の扱いにより月給者に比べて収入が不安定になりがちな月給日給者に対し配慮するものとされました。そして,有期雇用労働者らは時給制で,欠勤により給料が変動し収入が不安定となる点では月給日給者と変わりはないのであるから,正規労働者の月給日給者には精皆勤手当を支給し,時給制である有期雇用労働者らには支給しないことは不合理であると判断されています。


 精皆勤手当の支給基準を「月給日給者」という給与形態で定めてしまうと,もはやその精皆勤手当は,会社の業務の円滑な遂行確保という趣旨のものとは認められないでしょう。この会社では,月給者=事務・技術職,月給日給者=技能職という事情があったようで,それを踏まえ,精皆勤手当の支給基準を「月給日給者」としているのは,「技能職」であるライン工に支給するためで,それはライン工の業務の性質上,欠勤により工場全体の生産能力が低下することになるため,一定の出勤レベルを確保するために皆勤を奨励しているという旨の主張も裁判では行われたようです。しかし,会社が主張する精皆勤手当の意味合いを裁判所は認めず,裁判所は支給基準よりその趣旨を考えて行きました。会社としては,精皆勤手当の意味合いが裁判で主張したとおりであれば,まずは支給基準を「月給日給者」という給与形態によるのではなく「技能職」とか「ライン工」とすべきです。もっとも,支給基準をそのようにしたとしても,他の労働者とは異なり,「技能職」とか「ライン工」の出勤を手当をもって格別奨励すべき事情があるのか,別途検討する必要があるように思います。


2020年5月23日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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