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福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説11~「職務給」

最終更新: 6月27日

<本日の内容>

1 大手銀行の非正規労働者の処遇改善と採用減

2 「職務給」についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

3 富士通の取り組み


1 大手銀行の非正規労働者の処遇改善と採用減

 昨日の日経新聞の朝刊で,大手銀行で非正規労働者の処遇改善が進んでいるとの記事が掲載されていました。

 三井住友銀行・三菱UFJ銀行は,2020年度から賞与を支給することにしたとのことです。また,みずほ銀行は,以前から非正規労働者に賞与を支給していて,今般は,正規労働者に限っていた労働組合の加入資格を非正規労働者にも広げたとあります。このブログでも取り上げたりそな銀行と埼玉りそな銀行の待遇改善についても書かれていました。


 この記事を単体として見ると,大手銀行が非正規労働者の処遇改善に積極的に取り組んでいるようにも見えます。しかし,2019(令和元)年10月19日付日経新聞の朝刊では,3メガバンクの採用減の記事が掲載されていました。日経新聞がまとめた2020年度の採用状況調査で,3メガバンクの内定が4年前に比べて7割弱減った,減少分は一般職に就く女性の採用枠の縮小でほぼ説明できるとのことです。


 大手銀行の非正規労働者は,現在,支店の窓口や事務センターに勤務することが多く,それは以前一般職の女性正規労働者が主に担っていた業務でした。上記10月19日付日経新聞によれば,銀行の来店客数は,ここ10年間で3~4割減少したとのことです。すなわち,3メガバンクについては,支店の窓口業務等縮小に伴い,一般職の女性正規労働者の採用を抑制し,さらに一般職の女性正規労働者が担ってきた業務を非正規労働者に置き換える措置を講じていたところに,同一労働同一賃金の要請に従って非正規労働者の処遇改善が行われたといえそうです。したがって,りそなグループの,正規・非正規の社員区分を処遇の正当化事由とすることに疑問を投げかけるような人事制度へと3メガバンクも移行していく流れの中に,今回の3メガバンクの非正規労働者の処遇改善を位置付けることは,まずは慎重であるべきでしょう。


2 「職務給」についてのパートタイム・有期雇用労働法8条の不合理性判断

 さて,続きです。基本給の最後として,労働者の職務の内容に応じて支給される「職務給」における待遇の不合理性判断を検討してみましょう。

 ①職務給の性質・目的は,労働者の職務の内容に応じて支給されるものですから,②その主な考慮要素は,労働者それぞれの職務の内容となります。したがって,③正規社員と同一の職務内容であるパートタイム・有期雇用労働者には,同一の支給をしなければならず,職務内容に一定の違いがある場合にも,その相違に応じた支給をしなければ,その相違は不合理とされます(水町・前掲98頁)。


 同一労働同一賃金と聞いたときに多くの人が結び付けて考える人事制度が,この職務給制度だと思うのですが,同一労働同一賃金ガイドラインには,基本給としての職務給について記載はありません。


3 富士通の取り組み

 ところで,職務給といえば,2020(令和2)5月10日の日経新聞朝刊で,富士通の人事戦略が記事になっていました。富士通は2021年3月期から,職務を明確にして働く「ジョブ型」人事制度を導入するそうです。課長以上の約1万5000人を対象に運用を始め,その後一般社員にも広げる,役割や権限による世界共通の「レベル」を決め,月額給与はレベルに応じるとありました。

 一般に「職務給」と言っても,基本給の要素の一つに過ぎず,それが基本給に占める割合や他の基本給の要素の年功的運用などからして,「職務給」要素の比重は,実はそれほどでもないという制度を見かけることがあります。しかし,記事によると,今回の富士通の「ジョブ型」人事では従来の年功要素を完全に廃止したとあります。海外とも同一基準での運用となるようですので,これは純粋な「職務給」制度に近いものなのかもしれません。


2020年5月16日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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