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福岡の弁護士が同一労働同一賃金を解説8~「職能給」の続き

最終更新: 6月27日

<本日の内容>

1 「同一労働同一賃金」についてのりそなグループの取り組み

2 「職能給」についてのパートタイム・有期雇用労働法の不合理性判断


1 「同一労働同一賃金」についてのりそなグループの取り組み 

 日経新聞2020(令和2)年5月12日付朝刊で,「同一労働同一賃金」についてのりそなグループの取り組みに関する記事が掲載されていました。


 りそなグループの社員は,業務範囲や時間の条件によって,①限定なしの正社員,②どちらかを限定した「スマート社員」,③どちらも限定した「パートナー社員」の3つに分かれているのですが,グループ内の職務等級は一本化されていて,社員区分にかかわらず同じグレードの業務は同じ時給とされているようです。また,試験と面接を経て③パートナー社員を②スマート社員や①正社員に登用したり,育児や介護などの事情で,①正社員が②スマート社員などに転換することも可能のようです。

 

 りそなグループは,今回の「同一労働同一賃金」の要請に対応すべく,3区分で依然差があった手当や休暇制度を見直したとのことですが,その社員制度の基礎にはすでに「同一労働同一賃金」の考えを見ることができ,今回の改正にもスムーズに対応しています。りそなグループの社員制度は,金融危機の中で発生した「りそなショック」で総合職の男性が大量に退職し,残った社員の能力を引き出すために構築を迫られたことに由来するとのことですが,「同一労働同一賃金」を単なる法の要請としてではなく,社員活用のための人事制度改革の契機として位置付けるときの参考事例といえそうです。


2 「職能給」についてのパートタイム・有期雇用労働法の不合理性判断

 さて,同一労働同一賃金についての続きです。


 「職能給」について,同一労働同一賃金ガイドラインの問題とならない例ロには,「A社においては,定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給している。」とあります。


 「職能給」の不合理性判断において,「キャリアコースの違い」を考慮要素にできることをガイドラインはいっております。フランスの判例でも,「キャリアコースの違い」は格差を正当化する客観的理由とされているようです(水町・前掲166頁)。


 では,「キャリアコースの違い」を考慮要素とすることを,「職能給」の性質・目的からどう説明するか。

 「それが単に『将来への期待』という主観的・抽象的な事情によるものではなく,配転義務の有無・範囲の違いや課される職業訓練の幅・深さの違いといった客観的・具体的な事情に基づくものであれば、不合理でないものとして許容されうる。」(水町・前掲97頁)と説明されることもあります。この説明だと,「キャリアコースの違い」は,実は配転義務の有無・範囲や職業訓練の幅・深さという考慮要素に分解でき,それらを考慮することは,労働者の職業能力・経験に応じて支給するという「職能給」の性質・目的からも是認できるといっているようにも見えます(同一労働同一賃金ガイドラインの問題とならない例ハでも,定期的に職務の内容や勤務地の変更があることを考慮要素としています。)。しかし一方で,現在の業務と関連性を持たない労働者の能力又は経験は「職能給」においては考慮要素とならないとされていて(問題となる例),問題とならない例ロにおける店舗等の定型的業務と関連性のある能力・経験という点で,配転義務の有無・範囲や職業訓練の幅・深さを考慮要素とすることを,少なくとも私は上手く説明できません。


 「キャリアコースの違い」を考慮要素とすることを,「職能給」の性質・目的から説明できないと,「職能給」の不合理性判断において「キャリアコースの違い」をどこまで・どうやって考慮するのか見当をつけるのが難しくなります。「キャリアコースの違い」を考慮要素とすることは直感的には理解できるものの,その扱い方については事例毎の実態に即し,慎重に行うとのこと以上は,ここでは言えなさそうです。


2020年5月13日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

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